ムハンマド・シャーへの書簡より抜粋

 

 神がわれの創造に使用し給うた実体は、他の者の形成に用いた粘土とは異なる。神は、世才にたけた者には永久に理解し得ず、また信心深き者も発見し得ないものをわれに与え給うたのである……。われは神の「最初の言葉」を支える柱の一つである。われを認識するものはすべての真実と正しきものを知った者であり、すべての良きものと適切なものに達したものである。そしてわれを認めそこなったものはすべての真実と正しきものに背いた者であり、すべての悪と不適切なものに屈した者である。

 全創造物の主であり、すべての世界の主におわす汝の主の正義にかけてわれは誓う!ある者がたとえこの世においてできる限りの建造物を建て、神の知識が認める限りの良き行いを通して神を崇め、主の御前に達したとしても、もしその者が神の御前で釈明の責任もない程度であれ、われに対して悪意の痕跡を心に抱いていようものなら、その者のすべての行いはまったく無に帰し、神の恩恵の眼差しに授かることもなく、神の怒りを招き、確実に滅びてしまうのである。何となれば、神の知識の宝庫に秘められているすべての良きものは、われに従うことによって達成し得るのであり、神の書に記録されたすべての炎は我への不従順に起因すると神が定め給うたからである。われ思うに、この日、そしてこの立場から見るに、われの愛を心に抱き、われの命令に従う者は楽園の屋敷に住んでおり、われに敵対する群衆は皆すべて地獄のどん底の業火に葬られる。

 わが命に懸けて!神の証言である彼の大業を認める義務がなければ……われは汝にこのことを告知などすることもなかった。……天国の鍵はすべてわれの右手に、地獄の鍵はすべてわれの左手に収めることを神は定め給うた。

われはすべての創造物が創出されるに至った「最初の点」である。われは決してその光輝を覆い隠すことが出来ない神の御顔であり、決して衰えることのない神の光の輝きである。われを認識するものには確信とすべての善が用意され、われを認識しなかった者には業火とすべての悪が待ち受けている……

 唯一無二の御方、比類なき御方、真実者なる神に懸けてわれは誓う。神の最上の証言である彼がわれに明らかなる印と証拠を託したのは、すべての人々が彼の大業に従うことを可能にするために他ならない。

 絶対の真理である彼の正義にかけて誓う。もしベールが取り払われれば、汝はこの俗界において、わが愛の木陰に避難所を求めた者ら以外のすべての者らが業火よりも凄まじく強烈な神の怒りの火に苦しみもがいているのを目の当たりにするであろう。木陰に避難所を求めた者らは誠に幸福に満ちたものなり……

 神こそがわが証人である。われは商人としての訓練を受け、決して学者ではなかった。神はその恩寵により60[1]に神の証明である彼彼に平安あれを特徴づける確たる証拠と重大なる知識をわが魂に浸透させ、最終的にその年にわれは誰もが否定できない形で、神の隠されたる大業を宣言し、固く守られてきた柱を披露したのである。「すなわち、滅びる者は明らかな証拠を目前に置いて滅び、生きる者は明らかな証拠をもって生きるようにと。」[2]

 

 

その同じ年[60年]、汝の主権の地位にふさわしい形で神の証言である彼の大業に対して汝が接することができるようにとわれは汝に使者と啓典を遣わした。しかし、神の意志により、暗く恐ろしい、悲惨な大惨事は取り消すことのできない定めとされたゆえに、自らを政府の篤志家と見なす者らの介入により、その啓典は汝の面前に提出されることはなかった。それから既に四年近くたった今でも彼らは陛下にそれを提示していない。しかし、運命の時が迫っている今、そしてこれは信仰に係ることであり世俗の問題ではないため、われは汝に何が起ったかを垣間見せることとした。

 われは神に懸けて誓う!もしこの4年の間に汝の民や軍の手によってわれにもたらされたことを汝が知ったならば、汝が神の証言である彼の大業に従い、自分の短所や失敗を埋め合わせるために立ち上がることがない限り、汝は神への畏れのあまり息を止めるであろう。

 われがシラズに滞在していた時、その地の邪悪で堕落した知事の手がわれに振り掛けてきたことの侮辱の過酷さを一割でも汝が知れば、汝はきっと報復的正義により彼を罰するであろう。彼の容赦ない抑圧の結果、汝の宮廷は復活の日が到来するまで神の怒りの対象となった。そのうえ、彼は酒に溺れるあまりに理性的な判断が出来るほどに酔いから覚めることはなかった。よって、不安にさせられたわれは、陛下の英明で高貴な宮廷の御前に達する目的をもってシラズを離れざるをえなくなった。そして、モタムエドォド・ドゥレは大業の真理を理解するに至り、神に選ばれしものへの模範的な仕え方や献身ぶりを示した。彼の街に住む幾人かの無知な者らが扇動に立ち上がった時には一時的にわれを知事の邸宅に匿うことによって神聖なる真理を守った。やがて、神の好意に与った彼は至高なる楽園にある彼の住居に旅立ったのである。神が恩寵を持って彼に報い給わんことを……

彼が永久(とこしえ)の王国に昇った後、残忍なるゴルギンはありとあらゆる背信行為、偽りの誓い、そして抑圧という手段に訴えて、われを5人の護衛の下イスファハーンから追放した。その際、7日間にも及んだ旅に必要な最低限のものも提供せず(あゝ!あゝ!我に降りかかったことと言えば!)、それはやがてマークーへ向かうよう陛下からの指令が届くまで続いたのであった……

最も偉大なる主に掛けて誓う!もしわれがどのようなところに住んでいるかを汝に告げるならば、真っ先にわれに慈悲を垂れるのは汝自身となろう。山奥深くに砦[マークー]があり、……そこに住むのは監視人が二人と四匹の犬のみである。なればわれの窮状を想像してみよ。……神の真理にかけて誓う!もしわれをそのように扱うことに躊躇しなかった者が、いったい誰に対してそのような扱いをしてしまっていたのかを知ったならば、彼は誠に一生幸せを見出すことは出来なかろう。否、われは誠にこの件に関する事実を汝に伝えることとする。それはあたかもすべての預言者、すべての真実なる者ら、そして選ばれし者ら皆をすべて投獄したようなものである……

 この判決が我に知らされた時、われはこの王国の政務を執る者に「われを処刑せよ。神に懸けて汝に懇願する。そしてわれの首を好きなところに送ればよい。それというのも、われのような無実なる者が犯罪人のために確保された場に収容されることなどは到底許し得るものではなく、それに甘んじて生き続けることなどできはせぬ」と書き送った。しかし、われの歎願に対する回答を得ることはなかった。ハージーである閣下はわれらの大業の真理を完全に理解していないようである。神聖なる神の家を崩壊することに比べれば、男女を問わず、信仰深き者らの心を悲しませる方がよほど邪悪な行為である。

 誠に、唯一真理なる神が我の証人である。この日においてはわれこそが神の真の神秘なる神殿であり、すべての善の神髄である。我に善行を施した者は、神、彼の天使、そして彼に愛されし者らの集団すべてに対して善行を施したと同じである。我に悪行を施した者は、神、そして選ばれし者らに対して悪行を施したと同じである。否、神と彼に愛されし者らの地位の神聖なる敷居は何人(なんぴと)善行悪行し得ぬほど崇高である。我に達するものは我に達するよう定められたもののみであり、われに届いたものは与えた者に戻るであろう。わが魂を手中に収め給う御方にかけて言う。彼は自身の他には誰も投獄してはいない。というのも、神がわれに定め給うたものは確実に起こるのであり、神が定め給わぬものはわれに触れる事はないからである。その手を悪の源泉とする者に災いが訪れるであろう。そして手を善の源泉とする者に祝福あれ。われは神以外の誰にも不服を申し立てることはない。何故ならば神こそが最良の判事だからである。如何なる苦境や至福の状態も神のみから来るものであり、彼は全てに力強き御方、全能なる御方である。

 要約すれば、誰もが願うであろうこの世と次の世の善はすべて、わが手中にある。もし我がベールを取り除くならば、すべての者は我を自分たちの最愛なる御方であると認識し、我を否定する者はいなくなるであろう。この断言が陛下を驚かすことなきように。というのも、神のみに視線を向け、神の一体性を真に信じる者は、彼以外のすべてを無とみなすからである。神かけて誓う!我は、たとえ芥子の種一粒ほどの物であれ、この俗界の物品を汝から求めてはいない。実に、この世の物であれ、次の世の物であれ、所有するということは我にしてみれば露骨な冒涜に等しい。なぜなら、神の一体性を信じる者にとって神以外のものに目を向けることは相応しくないことであり、それを所有することはさらに不相応だからである。我は確かに認識している。我には不滅なる御方、慕われし御方なる神があるゆえに、見えるもの・見えざるものすべての所有なのである。……

 われはこの山に孤立させられ、今となってはわれが受けた苦しみほどの苦しみを受けた者は過去にいないまでに、またわれが耐えたことを耐え得た違反者はいないまでになった!われは神を讃え、再度また彼を讃える。われはわが主、わが君主の御心に従っている故、いかなる悲しみからも解放されている。われ思うに、われは最高の楽園におり、最も偉大なる御方である神との交わりに喜悦している。誠にこれは神からわれへの御恵みであり、神こそは限りなき恩恵の主である。

 神の真理にかけて誓う!もし汝がわれの知ることを知れば、汝は、真実者に従うことによりわれの御心にかなうようにと、この世と来世の主権を放棄するであろう……。もし汝が拒めば、世界の主は彼の大業を昇進させる者を起こし、確実に神の命令は実行に移されるであろう。

 神の恩寵により、何もわれの目的を阻むことはできず、また我は神が彼の恩恵の証しとして我に授け給うたものについて十分に意識している。もしそれがわれの本意にかなうなら、われは陛下にすべてを開示しうる。しかし、われはそれをせず、またすることもない。それは、真理がそうでないもの全てと区別されるためであり、イマーム・バーゲル彼に平安あれが述べた預言、つまり、「アゼルバイジャンにてわれらに降りかかることは免れ得ないものであり、それに比較しうるものはない。それが起った時には、家に籠り、われらが辛抱したように辛抱せよ。『動者』が動きを見せれば直ちに彼のもとへ急げ。例え雪の上を這わなければならなくとも」を完全に実現するためである。

 われは、われとわれに関わるすべてのものに関して神の許しを請い、「すべての世界の主である神に賛美あれ」と断言する。

 

 

 

ムハンマド・シャーに宛てられた
別の書簡からの抜粋

 

 天と地にあるすべてのものを知る神に栄光あれ。誠に主権を持つ統治者であり、全能者であり、偉大なる御方である彼の他に神はなし。

 彼こそは「切断の日」に真理の力により判決を下す者なり。誠に唯一無二なる御方、抵抗し難い御方、崇高なる御方である彼の他に神はなし。彼こそは全創造物の王国を手中に収める者である。唯一なる御方、比類なき御方、永遠不変なる御方、得がたい御方、最も偉大なる御方である彼の他に神はなし。

全てのものの創造以前に神が自らに対して証言し給うたように、今ここにわれも神に対して証言する。誠に栄光に満ち給う御方、全てに聡明なる御方である彼の他に神はなし。そして彼自身が彼の栄光の威厳をもって証言したように、われは彼が創造し給うたもの、および今後創造す給うすべてのものに対して証言する。唯一無二なる御方、御自力にて存在し給う御方、最も素晴らしき御方である彼の他に神はなし。

われは全創造物の主である神に完全に信頼を置いた。唯一無二なる御方、最も崇高なる御方である彼の他に神はなし。われはわが身を彼に委ね、われに係る諸事のすべてを彼の手に委ねた。最高統治者におわし、輝ける真理なる彼の他に神はなし。実にわれにとって、彼はすべてを満ちたらしめ給う。彼は何ものに頼ることもなく満ちたらしめ給う御方であり、天と地にある彼以外の如何なるものも、満たらしめることはできない。彼は誠に御自力にて存在し給い、最も厳格なる御方である。

 今まさにこの僻地の牢獄にてわれが何を渇望するかを見給う御方に賛美あれ。彼こそは常にわが証人であり、「ヒンの後」[3]の始まり以前からわれを見給う御方である。

 何故に汝は聡明なる御方である神に思いを巡らすこともなく判決を下したのか。如何にして汝は火に耐えうるのか?誠に汝の神は偉大で最も厳しき御方である。

 汝は自分の所有物を誇りとしているが、神と神の御しるしを信ずる者や構成なる者らならば誰もそのような物に目をくれはしない。現世は、来世を否定するものを除いては誰も近寄らない、またそれを口にしようともしない犬の屍のようなものである。誠にすべてを所有し、全能なる御方なる神の真の信者となり、業火の苦しみへと汝を誘導する者に背を向けることは汝の義務である。

 われは汝がことによると耳を傾け、正しい方向に導かれるようにならないか暫く待ってきた。あらゆる世界の主である汝の主の御前に証言するために証人が立つ日--間もなく訪れるその日に、汝は神にどう答えられるのか

汝を存在するに呼び起こし、そしてやがてその者のもとに戻る御方の正義にかけて誓う。もし汝の主の証を信じない者のままに汝が死ぬ瞬間を迎えたならば、汝は確実に地獄の門に入るであろう。そして、汝の手によりもたらされた行いの何一つも汝の利益にならず、また汝を後援する者も汝の代わりに弁護する者も見出さないであろう。神を畏れよ。そして現世における所有物を誇りとするな。正しき道を歩むものにとっては神が所持する物の方がよっぽど良いからである。

誠にこの日、この地上に住む者は皆、神のしもべである。誠に神を信じ、彼が顕示し給うた証を確信する者については、彼らの手が犯したことを、おそらく神は恩寵深く許し給い、彼の慈悲の境内に立ち入ることを認め給うであろう。彼は誠に常に許し給う御方であり、憐れみ深き御方である。しかし、われを軽蔑的にあしらい、われに背を向けた者、そして神がわれに託された確固たる証明と過ちのない啓典を否認した者らに関しては、神の懲罰の判決が下され、「切断の日」に彼らを守るものも援助するものも見出せないであろう。

存在するものすべてを創造し、すべてが彼の元に戻る御方にかけて誓う。ある者が死の際にわれに対して憎しみを抱いていたり、われに託された明らかなる証を否定したりすれば、その者の運命に酷い苦悩しかなかろう。その日には神が望み給わぬ限り、如何なる償いもとりなしも受け入れられない。誠に彼は抵抗し難い御方、栄光に満ち給う御方である。主権を持つ統治者、全能者、最も厳しき御方である彼以外に神はなし。

 もし汝がわれの投獄を喜ぶことあらば、汝にとっていかに悲しいことか。それは間もなく深刻な苦悩が汝を捕えるであろうから。神は断じて誰にも不正な審判を下す権限を許してはおられない。しかしそれでも汝がそうするなら、近いうちに汝は思いしらされるであろう。

 神の御前にて傲慢にならぬよう忠告した最初の日から今に至るまで4年の歳月が過ぎ去ったが、これまでの間に汝からも汝の兵士らからも悲惨な抑圧と軽蔑的な横柄以外のことを目撃したことがない。汝はわれが現世におけるつまらぬ物質を得ようと思い違えているようにわれ思う。否、わが主の正義にかけて誓う!慈悲深き主から目をそらさぬものにしてみれば世の財宝とその他の虚飾は屍の眼と同様、否、それ以下の価値を持つ。彼らが神と関連付けるものと神の栄光はなんとほど遠いものか!……われは神にのみ忍耐を求める。誠に彼こそは最高の保護者であり、最良の援助者である。われは神以外に庇護を求めない。誠に彼こそは守護者であり、最良の支持者である。

わが主、最も崇高なる御方、最も偉大なる御方である神の栄光にかけて誓う。彼は確実に神に定められた通りに彼の大業を燦然と輝かせるであろう。その反面、不正なる者には援護する者がなかろう。 もし汝に何らかの計画があるのならそれを示してみよ。実に、あらゆる権威は神より出るものなり。われは神に信頼を置き、彼に向けるのである。

 汝が企てたのと同じような判定、あるいは汝が承認したのと似たような判定を過去に下した者を聞いたことがあろうか。したがって、圧制者に災いあれ!汝の意図および人々のあしらい方はともに汝の神に対する不実を明らかに示している。よって、神は汝には厳しい懲罰を定め給うた。われは神にのみ忍耐を求め、彼こそはわが望みの的と見なしている。これはわれの側に疑いようもない真理があることを示すものである

 もし汝が、真実が露わにされ、不信心なる者らの行為が無に帰されることを懸念していないのであれば、何故に、われが不信心な者らを過去に狼狽させたように、神学者らを直ちに狼狽させることができるように彼らを国中から呼び寄せ、そしてわれを召喚しないのか。これがわれの汝、及び彼らへの確実な証言である、もし彼らが真実を述べる者ならば。汝、彼らをすべて召喚せよ。もし彼らがこのような言葉を発することができれば、彼らの主義主張は注目に値するものであることを汝は確認することができよう。否、わが主の正義にかけて誓う!彼らは力が奪われており、また理解力も賦与されていない。彼らは過去にその意味も理解せずに信仰を公言し、その後、真理を否定するに至った。それは彼らには洞察力が全く欠けているからである。

 もし汝がわれの血を流そうと決めたのなら、何故にそれを遅らせるのか。今の汝には力と権力が付与されている。われにしてみればそれは神より与えられる無限の恩恵となり、汝やそのような行為を実行に移す者らにしてみればそれは神より分け与えられた懲罰となる。

汝がこのような判決を下すとなれば、われを待ち受ける幸福はなんと素晴らしいものとなろうか。また汝がそれに合意するとなれば、絶大なる喜びは我のものとならん!これは神の宮廷にて御傍近く仕える者らのために神が限定し給うた恩恵である。ならば汝、認可せよ。これ以上待つことなかれ。誠に報復者である汝の主は偉大なり。

汝は神の証言である者を砦に拘束することを承認し、虜として不信者の手に渡すなぞして神の御前にて恥とは感じないのか。汝と、今現在われにかように過酷な屈辱を与えて喜ぶ者らを災いが待ち受けている。……

われを存在するよう呼び起こし給うた御方にかけて誓う。われは自分の内に罪悪の痕跡すら見ない。また、われは真理以外のものに従ったことはない。われには神が充分な証人である。俗界とその民、そして来世を全く意識しないままに世俗的な富に快楽を見出す者らはなんと不届きなることよ。

 もし汝の眼からベールが剥ぎ取られれば、迅速、かつ間近に迫った神の懲罰を恐れ、例え雪の上であれ汝は胸を地に付けわれの所まで這ってくるであろう。汝を創造した御方の正義にかけて言う。汝の統治中に何が起こったかを汝が知れば、汝は汝の父の腰から出ることがなければよかったと思うようになり、代わりに完全に忘却のかなたへと消え去ってしまいたいと望むであろう。しかし、汝の主である神が定めた給うことは今すでに起こっている。災いがこの日の圧政者を待ち受けている。

われ思うに、汝は過ちのない書を読んだことがない。もし汝が自身の道に満足し、真理に従う気がないなら、われにはわれの道、汝には汝の道あれ。もし汝がわれを援助しないのはともかく、なぜにわれに屈辱を与えようとするのか。誠に神は懇願者の聞き手であり、そして現世においても来世においてもすべての者がその最高の完成を彼に見出すのである。

天と地の主であり創造の主である神の栄光は、彼の戒律を忠実に従う者らの証言することを除いて、この世の者らが証言し、述べることからははるかにかけ離れている。彼のしもべ中の誠実なる者らに神の平安あれ。

すべての世界の主である神に全ての賛美あれ。

 

ムハンマド・シャーに宛てられた
更に別の書簡からの抜粋

 

 これは疑いようのない真の指導者である御方からの書簡である。この中には、快く彼の呼びかけに応える者らと正しく導かれた人々のうちに数えられることを望む者らのために、万物の法則が示されている。この中には、汝の主の啓示についてこの明確な天秤に従って証言する者らのために万物の法則が秘められている。万物に関する神の法令については、過去に誠にそれを雄弁なるアラビア語で著した。実に、その魂を汝の主の光の輝きによって創造された者らは真理を認知し、唯一真理なる神を忠実に従う者らのうちに数えられ、十分な確証を得ている。……

おおムハンマドよ!汝の主の定めは4年前に実現した。そして汝の主の大業の創始からこれまで、神を畏れよ、そして無知なる者らの一人とならぬようにと汝に忠告してきた。われは誠に輝かしい書簡をもつ使者を汝に遣わしたが、悪魔に従う者らは使者を軽蔑的にあしらって追い返し、その彼と汝の間に割入った。そして、汝が明白な主権者であるその国からその使者を追放したのである。よって、神の制定された命令に服従し、正しく導かれる者らの内に含まれない限り、汝は現世と来世の良きものを逃してしまったのである。

われが神聖なる神の家[4]から戻った時、われは最初に汝に送った書信と同様の、否それよりももっと偉大なる書信を汝に送った。実に神は最善の保護者であり最善の証人である。われは汝が神の命令に従い、真理を否定したものとならぬようにと、われが啓示した書簡を使者に託し汝に遣わした。しかし、圧政者は、邪悪なるものでさえも、また卑劣な悪行者らのうちのひとりでさえも犯さない類のことを犯したのである。……

われがこの地において受けた苦難は、過去の誰も受けたことのないものである。誠にすべてのことは神に戻るのであり、彼は誠に最善の保護者であり、すべてを認識し給う御方である。初日から今に至るまでに汝の民の手によりわれに降りかかったことは、サタンの行いに他ならない。[5]汝の主の大業が現れて以来、汝の行いは何一つ受け入れられなかった、汝は歴然たる過誤に迷い込みながら、汝に見えたものは全て、汝の主の為になされた行為だと汝の目には映ってしまっている。誠に、汝の日が間近にせまってきており、汝はこれらのことについて問われるであろう。当然、神は邪悪な者らの行為を見逃されはしない。

汝なくしては汝の支持者は軽蔑的に我を否定することもなかったであろうが、それでも彼らは愚かな者らに比べてはるかに道を外してしまっている。

  汝の王国の宰相に汝が任命した者が最善の指導者であり、最善の支持者であるとでも汝は思っているのか。否、われは汝の主にかけて誓う。彼の心にサタンが忍ばせたものを起因とし、彼は汝に深刻な困難をもたらすであろう。また誠に彼自身サタンである。彼はたった一文字でさえも神の書を理解しておらず、自らの手によってもたらしたことにより恐れおののいている。彼は心の内奥に隠した過去からの不信心な行為が露わにされないようにと喜んで汝の主が灯した火を消そうとするであろう。汝が彼を汝の宰相に任命しなければ誰一人として彼のことを気に留めなかったであろう。実に人々の評価では彼は明らかな暗黒に他ならない。……

汝、神を畏れよ。そして汝の魂がこれまで苦しめられている以上に責め立てられるのを許すな。それというのも、間もなく汝は他界し「あゝ、悪魔をわが宰相として選び、詐欺師をわが先導者、そして顧問として任命さえしていなければ」といいながら、汝自らが宰相に任命した悪魔から解放されたことを言明するであろう。

ファラオがしたことよりもはるかに卑劣なことをなすことで自らの魂に負担をかけながらも、何故に汝は自らを忠実なる者らの一人と呼ぶのか?また汝はどのようにして不義者の一人であり続けながらもコーランの節々を読むのか。ユダヤ教徒やキリスト教徒、またそのような真実を否定する者らでさえも、彼らの預言者の娘の子孫に危害を加えることに同意するなどあり得ない。懲罰の日が差し迫っている故、汝に災いが降りかかるであろう。汝は全能者であり天上の主、そしてすべての世界の主である汝の主の怒りに恐怖を覚えないのか。実にこれらの明示的な行節は真の導きを求める者らにとっては決定的な証しである。

例え辛子の種一粒程度の物であれ、汝の財産を奪うことも、また汝の地位に就くこともわれは望んではいない。もし汝がわれに従わないならば、汝には汝の所有物が与えられ、われには万全なる安泰の大地が与えられるだけのことである。もし汝がわれに従わないならば、何ゆえにわれを軽蔑視し、われを酷い不正をもって扱おうとするのか。われの住処を見よ誰も住まない聳え立った山である。人々に対し不当に不正を犯す者ら、そして「彼」の明瞭なる啓典に反して信者の財産を不当に、そして不正直に奪う者らには災いが待ち受けている。誠に、それに対し真の否定しえない指導者により任命されたすべての人々の正当な主権者であるわれは、例え一粒の辛子の種でさえも決して他人の所有物を侵害せず、また彼らを不正に扱うこともしない。むしろわれは彼らと同胞の如く親しく交わり、また彼らの証言者となろう。

わが使命は汝の主の書について述べること、そしてこの明確なメッセージを伝えることに他ならない。もし汝が楽園の門戸をくぐりたければ、見よ、それは汝の面前に開かれている、そして誰からの危害もわれには達しえないのである。これまで汝と汝の業務に携わる者に送った信書は我から汝らへの恩恵の証にほかならず、迫りくる日を汝が憂慮することを願ったうえのことである。しかし、汝が傲慢な態度を示した瞬間から神の書において汝に対し神の裁きが下されている。それというのも、誠に汝らは共に汝らの主を否定したからであり、滅びる者の中に数えられているのである。……誠にこれこそは汝らへの最終警告であり、これ以降汝らについて述べることもなければ、汝らが不信心者であることを断言する以外の発言もしないであろう。

われはわれと汝の諸事をすべて神に託す。彼こそは誠に最善の判事である。しかし、もし汝が戻り来れば汝が望むこの世の所有物のすべて、そして来世における言い表すことのできない喜びのすべてが汝のものとなり、現世において想像もしえないほどの栄光ある権能と威厳が汝のものとならん。しかし、汝が戻り来なければ、汝の罪は汝のみの責任となる。

 汝は全能者がわれに定めたことを変えることはできない。わが主である神があらかじめ定め給うたこと以外はわれに触れることも出来ない。われは彼に完全なる信頼を置き、誠実なる者らは彼を完全によりどころとするのである。

 おお主よ、私の証人となり給え。この輝かしき書簡を遣わすことで私は彼ら双方にあなたの御言葉を宣言し、彼らに対するあなた御自身の証言を完了いたしました。私はあなたの道において私の命をなげうつこと、そして間もなくあなたの許に戻ることに満足しております。天上と地上においてあなたに誉れあれ。あなたの定めにより彼らを扱い給え。誠にあなたは最高の擁護者であり、救助者におわします。

 おお主よ、人々が扇動する混乱を鎮め給え。そしてあなたの御言葉がこの地球上において燦然と輝き、それにより不信心の痕跡が残らないように成し給え。

 おおわが主よ、あなたの書簡の中で私が述べたことについてお許しを嘆願いたします。私はあなたに向かい悔い改めます。私はあなたを讃えるしもべの一人でしかありません。あなたは賛美される御方におわし、あなたの他に神はありません。私はあなたに完全なる信頼を置きました、そしてあなたの御扉にて懇願者であることを許し給うよう嘆願いたします。

 汝の主、強大なる玉座の主である神は、彼の明瞭なる啓典による導きもなく不当に彼について偽証することからは聖別されている。「誠に諸々の世界の主である神に賛美あれ」と述べながら、汝の主である神より許しを請う者らに平安あれ。

 



[1] ヒジュラ暦1260年、西暦1844

[2] コーラン8:44

[3] 「ヒン」という言葉の文字の総数値は68である。ヒジュラ暦1268年(西暦18511852年)はバハイ啓示の誕生の前年である。

[4] メッカにあるカーベ

[5] コーラン4:119を参照