親切
沖縄の夏も近い、太陽がいっぱいの日のことでした。リアズが学校から帰って来て、大声をあげました。「お母さん!聞いて!おれ見ちゃったんだ!帰り道、モナが何をしていたと思う!?」すると、
「リアズ!」と、後ろにいたシャラが強い声で、「告げ口しちゃ、ダメよ!かげ口は、お母さん、大嫌いなんだから!」 と、たしなめるように言いました。
「そんなんじゃない!これはいいことなんだよ!」とリアズがも
っと強く言い返しました。「モナが帰り道の道ばたにいたホームレスの男の人を見て、急に急ぎ足になったんだ。その後、道路の反対側の自動販売機から、ミルクか何か健康的な飲み物を買って、なぜかそのまま学校の方に引き返してきたんだ。
また道路を渡って、ホームレスの人の方に戻って行って、カバンの中の探し物をしているふりをして、気づかれないように、そっと、その人にその飲み物を置いていったんだ。なんと!モナは、その人に
健康ドリンクをあげようとしていたんだ。」
アスマはお母さんの横に立っていて、この話を聞いていました。「それで、おまえはモナのこの『お芝居』をずっと観ていたというわけか?リアズ?」
「そうだよ!最初はモナが何をしているのか見当もつかなかったよ。だから、からかってやろうと思っていたんだ、けど、モナの考えが分かったんだ。ワーオ!なんて親切なことをしたんだ!これがおれの姉ちゃんかい!?」
ちょうどそのとき、モナが帰ってきました。みんな感心してモナに注目しました。
「何よ?みんなどうしたの?」モナが気味悪そうに聞きました。
「ホームレスの人に親切にしたのを観ていたリアズが、それを話していたのよ。」と、お母さんがうれしそうに答えました。
「私のことを観ていたの?リアズ?私をよくスパイしているのね?リアズ?」モナが少し不機嫌になって言いました。リアズが笑って答えて、
「気をつけろよ、モナ!天知る、地知る、人知る、我知るというからな!」
「お母さんはね、私の子がみんな親切なのは、とても自慢なのよ。」と言って、お母さんが続けて、「ある老人が少年に、『大人になったら、何になりたいか?』と聞いたら、その子の答えは『親切に。』だったのよ。」お母さんがほほ笑みながら続けて、
「これこそ、お母さんはみんなに、そうなって欲しいのよ。」
「そうよ!お医者さんか、科学者になっても、親切でなければ、ただ
こわいだけよ!」と、シャラがお母さんに賛成して言うと、
「そうよ!お医者さんは、みんなこわいんだから!」と、アニサが言ったので、
「アニサ、親切なお医者さんもいるのよ!」とモナが言いました。
もう少し親切の意味が分かるようにと、お母さんが聞きました、
「だれか親切にする人の話、ほかに知っている?」、
「そう言えば、思い出したわ。」と、シャラが答えて、「私が 欲しかった人形を買えるように、アスマが自分の誕生日プレゼントに使うお金を足してくれた、あの親切! とってもうれしかった!」と、シャラが言って、夢みるように、こうふんして、「あのとき、アスマがこう言ったのよ、『おまえが、その人形を可愛がれば、それがおれのプレゼントだ。心配するな。』この親切!、泣けるじゃない!?」
みんなアスマの方を見ました。アスマが顔を赤くして、うつむいて下を見ました。モナがアスマを助けるように話し始めました、
「私は幼いエイドンのことを思い出したわ。シャラが可愛がっている子で、まだほんの5才の男の子なのに、自分の誕生プレゼントのお金を、お兄ちゃん二人と自分とで分けると言い出したのよ。」
「そうなんよ!なんて親切で優しい子なんだろうね! 私にも、お母さんになったら、こんな息子が欲しいわ。」とシャラがうらやましそうに言いました。
アスマが、「おれが知っている話は、本当にあった話かどうか分からない。。。。わなに足をとられたワシを見つけたお百姓さんが、最初はそのワシを殺そうとしたんだけど.......、よーく見ると、どんなに美しいワシか気づいて、『この美しいワシが自分に一体何をしたというのか?、殺す理由がない...』そう言って、わなを取り外して、その美しいワシが空高く飛んでいくまで見守ったんだ。
「あーあ、親切なのね!」とアニサが言って、みんな拍手しました。アスマが続けて、
「一週間くらいして、お百姓さんが大きな石垣を背にして休んでいると、あのワシが飛び降りてきて、お百姓さんの帽子をくわえて、そこから離れたところで落としたんだ。なんてことをするんだと思いながら、お百姓さんが帽子を追いかけていると、石垣が崩れ出した。そこにいたら下じきになって、死んでいたかも知れない。互いに親切なおかげで助かったわけさ。」
「あれ?ワシはこわい顔なのに、親切なんだね!?」とアニサが言って、みんな笑ってしまいました。
「いいお話ね、アスマ。クモを助けた男の話に少し似ているね。」シャラが言うと、「何が似ているだ!おわりは全くちがうぞ!」リアズが笑って言いました。
「教えて!教えて!その話!」面白そうだと、アニサがねだりました。
「この男はどろぼうで、悪いことばかりしているのよ。」モナが話し始めると、
「私、この話できるのよ、モナ!」と言って、シャラが話し始めました、
「ある日、この男がどろぼうして逃げる道で、もう少しでクモを踏むところでした。『踏んだら、かわいそうだ!クモだって生きているんだ!』と、男はクモを道から外してやったの。でも、悪いことばかりしていた男は、次の世で地獄に落ちていきました。次の世で、仏様が天国のきれいな蓮の花の池を眺めておられたとき、ずっと底の地獄に、この世で悪いことをしていた人たちの中に、その男を見つけられたの。仏様はクモに親切にした男のことを考えて、クモに頼んで、糸を底に垂らしてもらったの。男は喜んで、その糸をのぼり始めたら、たくさんの人が昇ってきたの。男は驚いて、『おれが見つけた糸だぞ!糸が切れるじゃないか!』と言って、その人たちをふり落とそうとしたの。すると、糸が切れて、みんなまた底の地獄に落ちていきました。」シャラは空をつかんで身体をよ
らせて、床をけって、床にころんで、その男の真似をしながら話しました。「仏様は残念そうに、あきらめて池を去っていかれました。おわり!」
「あーあ、悲しいね!」とアニサが言って、お母さんに聞きました。「お母さんこのお話はどんな意味?」
「親切にしたら、親切をもらったけど、自分だけを考えて親切にしないと、親切をもらうこともなく苦しいことになるのか
な。」と、お母さんが答えました。
「親切は良い!自我は悪い!分かった!」リアズが両手の親指を立てて笑いながら言いました。みんなも笑って賛成しました。
「親切は自我の反対?」とモナが聞きました。
「そうね、」お母さんが賛成して、「親切は自分を忘れて相手に愛をみせる。自我は自分だけで相手には愛をみせない。美徳はみんな神の愛をみせるんだけど、自我にはその愛はないわね。」
「魔法のパラソルをもらった少女の話、知っている?」モナがみんなに聞いて、話し始めました、「パラソルは日傘のことなのよ、アニサ。この少女は自分がとてもみにくいと思ってあまり外に出ないの。でも、ある日、どうしてもお祭りを観たくて 姿を見せない格好で外に出ました。途中の店で、店番のおばあさんが少女の親切な心を知っていて店のパラソルをくれました。少女がパラソルを指して店の鏡を見ると、自分が美しくなった
のに驚きました。それは魔法のパラソルでした。少女はおばあさんにお礼を言って、自信いっぱい、喜んで祭りの中を歩き回り
ました。途中、不自由な体の少年がからかわれているのを見て、そのパラソルを少年の頭の上にさしてあげました。すると少年は背の高い美少年に変身しました。二人はダンスをしたり、ゲームをしたり、祭りを楽しみました。祭りの終わりに少女はパラソルを少年にあげるか自分に持ち帰るか、迷ってしまいました。自分より体の不自由だった少年の方が必要だと考えて、少年にあげることにしました。もとの自分で満足することにしたのです。」
いきなりシャラがこうふんして続けて、
「彼女は帰る途中の池で自分が映っているのを見て驚きました。なんと前よりもっとしくなっていました。親切な愛が美しくしたということね!」とシャラが話を終わりにしました。
「やったー!いい話だった!」とアニサがうれしそうに言いました。
お母さんがみんなに言いました。「とにかく私たちは、出会う人みんなに愛をみせて、親切にするのよ。それには、どうしたらいいか;①ニコニコすること、②尊敬すること、年下でも年上でも。③仲間外れにしない、④知らない人でも手伝う。⑤自分より、相手の人を先にする。」お母さんがほほえみながら続けて、「アブドル・バハをお手本にするといいわね。アブドル・バハは、ご自分がどんなことをされても相手の人を親切にされたのよ。」
「そうよ!動物や虫でもアブドル・バハとバハオラはいつも親切だったもんね!」とアニサが言いました。お母さんが付け加えて、
「神様の生き物に親切にした話はたくさんあるの。キリスト、仏様、モーゼ、モハメッドなどのお話にもたくさんあるしね。これはいつか話しましょう。さて、そろそろ宿題をする時間よ!そうだ!この時間にバハオラの言葉で、『とのでしかのをように。』バハオラを暗記して、夕食のとき、お父さんに聞いてもらいましょう!これは子供部屋のホワイトボードに書いておくからね。質問があれば、宿題といっしょにお父さんに説明してもらいます。アニサはお母さんが手伝うから、夕食の支度をする私といっしょに台所で暗記しましょう。」
いよいよ発表のとき、アニサはお父さんに励まされて何とかうまくできました。あとの子はお父さんの前で緊張したけど、協力しながらできました。お父さんにほめられて緊張がとれると、いつもの笑い声で始まる一家だんらんが始まりました。
「正しい人にも正しくない人にも平等に雨は降るのとおなじように、正しい、正しくない判定にかかわらず、すべての人に平等にあなたの親切さを雨のように降らしなさい。」 仏様
クイズ
- リアズがお母さんに知って欲しかったのは、だれのことですか?
____________________________________________________________________________ - モナはだれに親切にしたのですか?
____________________________________________________________________________ - モナはホームレスの男の人に、どんなことをして親切にしたのですか?
_____________________________________________________________________________ - アスマはだれに親切にしたのですか?
_____________________________________________________________________________ - シャラの友だちのエイドンはどんなことをして親切にしたのですか?
_____________________________________________________________________________ - ワシはお百姓さんの親切にこたえてどんな親切をしたのですか?
______________________________________________________________________ - 仏様はクモに親切にしたどろぼうの男に 恩返しとして、どんな親切をしたのですか?
_____________________________________________________________________________ - どろぼうの男がほかの人たちを振るい落とそうとしたら、何が起きたのですか?
_____________________________________________________________________________ - だれにも親切で、やさしくする少女に、魔法のパラソルで何が起きたのですか ?
____________________________________________________________________________ - 親切にする五つの方法は、何だったでしょうか?
____________________________________________________________________________
どうですか?いくつ答えられましたか? 答は保護者のページにあります。
魔法の花
用意するもの
- 花もようのプリント(次のページにある).
- はさみ
- 異なる色の水性マジック数本(水に溶けるもの).
- 水を2,3㎝の深さに入れる容器(はすの花のように水上に花だけ浮いて咲くため).
作り方
- プリントの花を、いくつか切り取る
- 花に、それぞれ異なる色の色マジックで色付けをする
- 花びらを、先が花の中心にくるように折りたたむ
- 花びらを折りたたんだまま、水上に浮かせて、!見よ!水上で色とりどりの花びらが花だけで開いていく、魔法の花、水中花のできあがり!要注意!このまま長く放っておくと色が水に溶けます
ぬり絵をして生き物の名前と数を見つけましょう。
写真
保護者のページ
大人も子どもも、親切な行為がいつもできるように、次のバハオラとアブドルバハの引用文を、お子様と一緒に、「親切」について、より深く考察されてみてはいかがでしょうか?
もし、ある真理にあなたは気がついていれば、あるいは、他の人たちが持たない宝石を持っていれば、この上ない親切と善意を込めた言葉でそれを分かち合うがよい。
バハオラ
汝らは皆一つの世界に生き、一つの意志の働きによって創造されたのである。至上の親切と愛の精神を持って万人と交わる者に幸いあれ。バハオラ
もし、落ちぶれた者や虐げられた人々に会っても、彼らを軽蔑し、背を向けてはならない。なぜなら、栄光の王は常に彼らを見守り、汝の主、慈悲深きお方、すべてに賢きお方の御心のままに自らの望みと願いを従わせた者らの外は、誰も想像できないほどのやさしさで彼らを取り巻き給うからである。おお地上の富める者らよ、ちりの中に横たわる貧しき者の顔から逃げてはならない。いや、それどころかむしろその貧しき者を助け、計り知れない神の定めによる彼の苦悩を語らしめよ。 バハオラ
現代は、地上のすべての人々と、この上ない親切さと愛情をもって交わり、神の偉大なる慈悲のしるしと証しになるべきときである。アブドル・バハ
あなたがたは、一本の木の果実であり、一つの枝の葉っぱである。人類家族のすべてに憐れみ深く、親切にしなさい。見知らぬ人でも友人として接しなさい。アブドル・バハ
あなたがたの義務は、誰にでも親切にすることと、その人たちの幸運を願うことである。 アブドル・バハ