おお心霊の子よ!
われ汝を気高く創った。
しかるに汝は自らを卑しくした。
されば汝が創られたところにまで
汝を高めよ。
バハオラ
初夏のすがすがしい土曜日の朝のことでした。家族みんなが畳の部屋に集まって、いつものように朝のお祈りをしました。最後にお母さんが、『かくされたる言葉』を読み上げました。
「おお心霊の子よ!われ汝を気高く創った。しかるに汝は自ら を卑しくした。さらば汝が創られ
たところにまで汝を高めよ。」“O Son of Spirit! Noble have I created
thee, yet thou hast abased thyself. Rise then unto that for which thou wast created.”
お母さんはアメリカで育ったので、英語で読み上げました。子どもたちは学校では日本語で、家では英語で育ちました。
アスマが聞きました。「アベース(abase)ってどういう意味なの?お母さん? 」
モナが言いました、「覚えている?アスマ…ほら、前にもあったよ。アベースメント(abasement)
とは、本来の価値を下げることを気にしていない、だったと思うけど? お母さん?」
「わかった!」突然、末っ子のアニサが声を上げました。 「 それはね、
物置にしている地下室(basement)のことよ。明かりをつければ、怖くないよ!」 みんな笑ってしまいました。リアズが笑いながら、アニサの間違いを説明しました。
「アニサ!『ベースメント』は地下室だけど、モナの言ってるのは、アベースメントだよ。」
お母さんが、「モナの答えでいいのよ。」と言ってほほ笑んで、「人間はもともと精神的な存在で、魂で神様の精神的な光、美徳のすべてを鏡のように映すことができるのよね。でも、自分のことだけを考えるようになると、鏡はそのほこりで曇って、人間ではなく動物に成り下がってしまいます。だから、私たち一人一人に神様の光が映し出されているのを見
て、お互いに尊敬するべきです。そうしなければ、私たちはお互いに卑しく見るようになって、気高くなくなっていくのよ。」
「気高い? それは王様か様女王のような意味なの?」シャラが聞きました。
「シャラが言うのは、見た目だけを見て言う意味だ。」静かにみんなの話を
聞いていた、お父さんが言いました。「この場合、愛とか喜びとか、形がなくて目に見えないものを指すんだよ。人間には二つの性質があって、一つは
動物的な性質、もう一つは精神的な魂の性質だ。」
「わたしはこの二つの性質を、馬と馬の乗り手にたとえるのが好きなの。」
と、お母さんが言いました。 「動物的な性質を馬に、魂 の性質を馬の乗り手にたとえるの。どこに行くかを、動物の馬に決めさせるわけにいかないでしょ。魂の性質である乗り手は、正しい方向に馬を導く必要があるよね。そして、いつもそうするなら、私たちは気高く
創られた人となるのよ。」
「はい! リアズの乗り手はいつも馬を逃がしていまーす。」とアスマが意地悪そうに笑うと、リア
ズも他の子たちと一緒になって大笑いしました。
シャラが言いました、「お母さん、馬は見えるけど魂 の乗り手は見えない透明人間なんて、ヘン
なのー!」 みんなが笑ってしまいました。
お母さんがシャラの目をのぞいて、「愛の目では見えるよ!」と答えました。
子どもたちが手を叩いて賛成しました。
突然リアズが、「そうだ!思い出した!バハイ子どもクラスで、これとよく似た話を聞いたぞ!人には 2 匹のオオカミがいるという、アメリカインデアンに伝えられているお話なん
だ。おじいさんがこのオオカミのことを孫に話していて、良
いオオカミと悪いオオカミがいつも戦っていると言うと、孫はどちらが勝つのか聞いたんだ。」 突然、シャラが割り込んで言いました。 「おじいさんは答えました。『お前がよくエサをやる方だよ!』」 リアズが、シャラに向かって開き直って言いました、「良いオオカミか悪いオオカミのよ
うにするのかは自由意志で決める、おれの勝手だー。」
「このお話、何を言いたいのか,わかんない。」とアニサが言いました。
モナがわかりやすく説明しました。「いつもやりたいことをやれば、正しいことをするのが難しく
なるのよ。悪いオオカミにエサをやると、そうなるのよ。私たちがいつも自分を忘れて他の人のために良いことをしようとするなら、それがより簡単になって、しやすくなるのね。これが良いオオカミを育てることなの。そうすると、私たちは神様が創られた気高い人になるってことなの。そう
でしょ!? お母さん?」
「素晴らしい説明ね! モナ!」と、お母さんが感心して言いました。
「すべての美徳で、私たちに気高さが表れるのよ。その美徳のいくつかを言える?」
「愛 !」「優しさ !」「真実 !」「許し!」「寛大さ!」子どもたちはみんな叫びました。
お父さんが言いました。「バハオラは、一人一人の人に神の性質のすべてを
映し出す能力があると言われているんだ。今のは、お前たちが知っているほんの一部だ。お前たちには自分の知らない能力がまだまだあるというこ
とだ !」
アスマが言いました。「創造性!何でもつくれる創造主の神様は、この宇宙
もこの自然も 存在しなかったのを存在させたんだから。おれたちは、その性質を映し出すことができるとおもうよ。だって、人間は自然にないものを
創り出したじゃないか。飛行機、車、音楽、物語、芸術作品とかね。」
続いてモナが言いました。「言葉!言葉よ!言葉はどこでも世界の果てまでも、人と人とがつなが
るために人が発明したのよ。」 お父さんが続けて加えて、「バハオラは、言葉の本当の目的は、人間が神様を知り、それに従うことができるためであると言われているんだ。だから、我々は神の顕示者から神様のことを習うんだ。それで、魂を成長させるために美徳を習うんだ。」 続いて、お母さんが魂の成長について説明しました。
「私たちは、すべての美徳を使える能力があると言われているんだけど、本当のところ私たちの
体も魂もまだ赤ちゃんで、成長するためにこの世に来ているのよ。」
アスマが言いました。「なんか、それってカンガルーの赤ちゃんみたいだね。」みんなアスマの方を見ました。 「カンガルーの赤ちゃんは母親から出てきたとき、3,4 セ
ンチの大きさで虫みたいなんだ。親は人間の大人ぐらいなのに。赤ちゃんは母親のお腹にある袋に這い上がって、その中のお乳でカンガルーらしい
姿になって、袋の外の世界に出ていくまでそこで育てられるんだ。」
「うわー、すごい!おれその写真を見たいなー!」とリアズがこうふんして
言いました。アスマが、「ちょうど図書館から借りてきたオーストラリアを
紹介する本がある。後でそれをみんなにも見せるよ。」
「見せて、見せて! 子どもたちは、みんなうれしそうに声を上げました。
お母さんは話を元に戻して、「人間も、お母さんの袋の中にいるカンガルー
の赤ちゃんのようなものなの。人間は体も心も赤ちゃんなの。体を成長させるだけでなく、魂も成長させなければならないのよ。次の世界を目の前
にすると、袋から出て、次の世界に飛び出すのよ。馬と馬の乗り手のたとえ
を覚えている? 馬はわたしたちの体よね。次の世界である目的地に到達
したら、馬の乗り手は馬を降りるの。死ぬっていうこと。だから、魂
は、次の世界つまり魂のふるさとに帰るために、魂を成長させて準備をしなくちゃならないのよ。」
続いて、お父さんが言いました。「人間の気高さについてのこの話のまと
めとして、『かくされた言葉』にあるバハオラの引用文でおしまいにしよう。
『汝の心はわが家である。わが降臨のためにそれを清めよ。』
この意味は私たちの心を純粋にして、つまり、自分を忘れて他の人を心配することだな。これが
私たちが気高くなる方法なんだ。なぜなら神の光は私たちの魂を輝かせることができるから
だ。」
リアズが、「これで終わったの? いい勉強になった! いい一日になるぞ! きょうだいたちが外で
遊びたがっていると思うけど。」とまじめな顔をして言いました。そして、
「自分のことを忘れているだろう、神様の光がおれの魂から輝いているはずだけど。」と言っ
てニヤッとしたのを見て、アスマが言いました。「確かに!あなたはリアズです!自分のことを
自分で言うなんて!本当に忘れて言っているのか?」
みんな笑ってしまいました。
「それじゃ、みんな!」とお母さんが言いました。「テーブルを片付けてお皿を流しに入れるのを
手伝ってから、みんな外で遊んでいいよ ! 」
「やったー!」と叫んで、みんな台所へ急いで行きました。
クイズ
- お話の初めに、家族はたたみの部屋で何をしましたか。
__________________________________________________________________________________________________ - 「気高い」とはどういう意味ですか。
__________________________________________________________________________________________________ - 馬と馬の乗り手のたとえでは、どちらがわたしたちの体で、どちらが魂ですか。
__________________________________________________________________________________________________ - わたしたちの中の良いオオカミと、悪いオオカミが戦うとき、わたしたちがどうする方が勝ちますか。
__________________________________________________________________________________________________ - わたしたちが気高くなる美徳をいくつか挙げてみましょう。
__________________________________________________________________________________________________ - カンガルーの親と生まれたばかりの赤ちゃんの大きさはどれぐらいですか。
__________________________________________________________________________________________________ - 人間の魂とカンガルーの赤ちゃんはどのように似ていますか。
__________________________________________________________________________________________________ - 馬の乗り手が馬から降りると、馬と乗り手はそれぞれどうなりますか。
__________________________________________________________________________________________________ - 私たちはどうすると気高くなりますか?
__________________________________________________________________________________________________ - お話の最後に、リアズは何をしたかったのですか。
__________________________________________________________________________________________________
どうでしたか? いくつ答えましたか? 答えは保護者のペ―ジにあります。
美徳ビンゴゲーム
用意するものと作り方
- *ビンゴカード:次のページをコピーする。(人数分+1)
- *はさみ と のり
- *ビンゴカードの 24 のマス目におく 24 枚の紙きれ(人数分)
- *コピーの美徳の言葉(24 種類)をひとつずつ切り取って、各自が、マス目にランダムにのり付けする。(真ん中の愛はフリースペースです)
- *余分のコピーの美徳の言葉を、模造紙のカード 24 枚に貼り付ける(読み手用)遊び方読み手が美徳カードを一つ読み上げる。他の人は、読み上げられた美徳の言葉を探して、その上に紙切れを置いていく。(真ん中の愛はフリースペースです)縦か横か斜めのいずれか、紙切れが一直線にそろったら、元気よく「ビンゴ!」と言おう!
- *美徳の言葉が読み上げられたら、みなさんが、これまでに出会った人や物語の中で、その美徳を見つけたことを思い出してみてくださいね。
忍耐、同情
奉仕、服従、援助、親切、お世話、正直、清潔、許し、和合、正義、創造、寛大、真実、感謝、信頼、尊敬、責任、勇気、謙虚、優しさ、礼儀正しさ、慈悲
保護者のみなさまへ
「気高さ」について、バハオラの言葉より(かくされたる言葉、アラビア編より)
おお実在の子よ! 権威の手もてわれ汝を創り、威信の指もてわれ汝を創り、なおわれ汝のうち
にわが光の真髄を置いた。汝それに満足せよ。そして他に何ものも求むるな。わが業は完全にして、わが命令は免れ得ざれば。何故と問うな。また疑いも抱くな。(12 番)
おお心霊の子よ! われ汝を豊かに創れるに、何故汝自ら貧しくするや。気高くわれ汝を創れるに、何故汝自ら卑しくするや。知識の精華もてわれ汝を生ぜしに、汝何故われより他の者に教化を求むるや。愛の粘土もてわれ汝を創りしに、汝何故他のものに没頭するや。汝の眼を汝自らに向けよ。され
ば汝、汝のうちに威光に輝き力強く自存しつつあるわれを見出さん。 (13 番) 万国正義院の言葉より
この世での生活は、試練と達成、挫折と新たな精神的進歩の連続です。道は時にはとても険しく感じられます。その中で繰り返し目撃される事実があります。つまり、それがいかに困難なものに見えても、バハオラの法に確固と従う魂は精神的に成長します。逆に、自分の見かけ上の幸福のために法の妥協を許すものは幻想を追っていたことがのちに判明します。求めていた幸福は達成できず、精神的成長は遅れ、結局は新しい問題を自分に引き寄せることが頻繁にあります。
祈りは、理性が祈りの効果によって啓発されるよう、黙考と瞑想を呼び起こすような、誠実で純粋な心をもって行わなければなりません。そのような祈りは言葉の限界を超え、単なる音声をはるかに凌ぐものとなります。その旋律の甘さは心を喜ばせ、高揚させ、聖なる言葉が持つ浸透力を強化し、世俗的性向を神々しい属性へと変え、人類への無私の奉仕に駆り立てます。
クイズのこたえ
1)朝のお祈りをしていた 2)高い道徳基準をもっていること。自分を忘れて他の人のために良いことをしようとする性質 3)馬を体に、馬の乗り手を魂にたとえている 4)よくエサをやる方 5)慈愛、親切、奉仕、寛大 など。 ビンゴの紙に美徳の言葉がたくさん書いてあるよ。見てみてね。 6)親は人間の大人ぐらいなのに、カンガルーの赤ちゃんは、3,4 センチの虫みたいな大きさ 7)次の世界にいくまで魂を成長させなければならない。 8)馬は死ぬが、馬の乗り手はふるさとに帰る。 9)わたしたちの心を純粋にして、自分を忘れて他の人を心配することによって 10)外で遊びたかった。