許し

涼しくなった沖縄の秋のある日、二女のシャラが学校から走って帰ってきました。

急いでランドセルを背中から脱ぎ捨てて、家の奥に向かって叫びました。

「お母さん!見て!学校で男の子に一発やられて鼻血が出ちゃった!」

お母さんは驚いて飛び上がりました。そして、シャラの顔を注意深く見ました。5人きょうだいの末っ子のアニサも、シャラの鼻が心配で急いで走ってきました。

おてんばのシャラの相手だから、わんぱくで大きな子を、お母さんは想像して、   「一体どうしたの?」とシャラに聞きました。

そのとき、モナ、アスマ、リアズも学校から帰ってきました。

「私のクラスの男の子が先生に向かって生意気だったんで、何度も止めなさいと言ったのよ。でも、まったく言うことを聞かないから、後ろから羽交い絞めにして先生から離そうとしたの。」と言いって、シャラはリアズの後ろから羽交い絞めにして腕をリアズの首にまきつけて見せました。シャラが続けて、

「あいつは頭を私の鼻にぶつけてきたの!」リアズがその子のまねをして見せました。シャラが続けて、

「それで鼻血が止まらないし、痛くて,痛くて大変だったのよ!」と言いながら、ふとガラス戸越しに外を見ました。突然、シャラは、

「あれー、いやだー!」と大声を上げたかと思うと、自分の部屋に隠れてしまいました。みんな何事かといっせいに外に目を向けました。そこに見えたのは、果物かごを手にした婦人がこちらにやって来るのと、その後ろにつづく少年でした。お母さんがその二人連れを出迎えに外に出ました。アスマ、リアズ、アニサも何が起きるか見届けようとして、一緒に外に出てみました。婦人は息子が学校でシャラにケガをさせたと言うので、お見舞いに来たと説明しました。お母さんは思ったより少年が小さいのに驚きました。シャラよりずっと小さく見えました。少年がかわいそうになってきました。家いえに戻もどると、お母かあさんはシャラが隠かくれている部屋へやに向むかって大声おおごえで言いいました。

「シャラ、外に出てごあいさつしなさい!クラスであったことを正直に話すのよ!そしてシャラも謝りなさい!」しかし、この後お母さんはとても恥ずかしい思いをしました。何とシャラがボクシングの構えで現れたのでした。アスマとリアズはおかしくて吹き出しそうになりました。

「シャラ、こちらに来て謝りなさい!ほんとうにもう‼」お母さんは顔が真っ赤になりながら、叱るように言いました。そして、シャラの手からボクシング・グラブをはぎ取りました。婦人は息子をシャラの前に引っ張り出して、息子の頭を手で押さえました。男の子は謝る姿勢で頭を下げたまま小声で言いました、

「シャラ、ごめん!鼻血が出てしまって。そんなつもりじゃなかったんだ。本当にごめん!」

お母さんがきつい顔をしてシャラに言いました、                   「シャラ、この子に少し乱暴しすぎたのよ。この子は自分を守ろうとしただけよ。だからシャラも謝りなさい。」                          「ごめんなさい!首を絞めてしまって、私もそんなつもりじゃなかった。」

お母さんがホッと胸をなでおろして、シャラと男の子に提案しました。

「仲直りのしるしにシャラが子ども部屋に案内して, せっかくだから、きょうだいみんなでゲームでもしたら?」

「やったー!」みんな喜んで家に戻って行きました。お母さんとその婦人は台所で

コーヒーを飲んで楽しくすごしました。夕食のとき、お母さんはこの出来事をお父さんに話しました。そのとき、長女のモナがシャラに聞きました。

「結局、シャラはその子を許したわけ?どうなの?」

「そうよ。許すのは、正直に言ってむずかしかった。でも、一緒にゲームを始めたらとても楽しくなって、その子が本当はいい子だとわかって、嬉しかった!」

お父さんが、なるほどと、うなずいて言いいました。                  「許すと言うのを聞いて、思い出したんだが、ダライラマのお言葉に、『誰かに怒っているのは、毒を飲んでいるのと同じで、その毒で相手が死ぬと思っているようなものだ。』というのがあるんだ。」これを聞いて、リアズとアスマが大声で笑うので、モナが言いました、

「その通りよ、考えてごらん。誰かに怒ったり、がっかりしたりしても、その相手はそんなことも知らないで平気でいるかもよ。」

「そうだ!これに似た話を知っているよ。バハイ・サマースクールで聞いたんだ!おもしろかったよ。」リアズが興奮してイスから立ち上がって、言いました。

「女の先生のクラスの子どもたちのことだけど。その子どもたちがケンカばかりしていて、みんな怒っているんだ。」アニサが早く話のつづきを知りたくて、                        「それでどうしたの?」と大声で叫びました。

「そんな子どもたちのために、この先生にいい考えが浮かんだのさ。」        リアズがもったいぶって続けました。                          「さっそく先生はクラスに大きなかごに入れたたくさんのじゃがいもと、袋をたくさん持って来ました。そして子どもたちにその袋を配って言いました。       『これから、みんながすることを説明します。自分が誰かに怒るとき、ここにあるじゃがいもを一個、その袋に入れなさい。誰かを許せば、今度はその袋から一個、取り出して元に戻しなさい。学校にいるときで、しばらく、これをつづけてみましょう。』もともと許すことを知らない子どもたちは、ケンカばかりするものだから、袋はどんどん重くなっていったんだ。」ここで、リアズは子どもが袋を重そうに引きずるのをまねして、それから話に戻りました。

「こうして、しばらく続けていくうちに、乱暴にして傷つけたせいか、じゃがいもはくさってきて、臭いにおいがしてきました。それでも子どもたちはそんな袋を引きずりながら、続けました。」/今度は、リアズは鼻をつまんで見せながら、歩いて回りました。実際はない袋が、目の前にあるように見せるリアズに、思わずアニサが拍手しました。リアズは本当に役者でした。拍手のあと、また話に戻りました。

「ついに、一人の男の子がこんなことは止めようと決心しました。そして、他の子こたちの良い点のことを考えてから、大きな声で言いました。『このクラスは、本当はみんないい子ばかりじゃないか!ぼくはみんなのことが好きなんだ!これまで怒ったけど、みんな許す!』男の子は言い終わると、袋のじゃがいもを全部ゴミ箱に捨てました。」ここで、リアズはニコニコしながら、男の子が他の子を許すときの気持ちよさを、笑顔で見せました。それから、また話に戻りました。

「クラスの全員がこの男の子に賛成して、男の子と同じようにしました。そして、

怒るのは自分を傷つけるだけで、相手を許すには自分より先ず相手の良い点を考えることを習いました。」ここで、リアズは、おしまいのお辞儀をしました。みんなでリアズとこの話に拍手をしました。

アスマが手を挙げて言いました。

「アブドル・バハが許す話は、最もいいお手本だよ。この話に出てくる男は、バハイがきらいで、バハイに怒っていました。特にバハイの指導者だったアブドル・バハを目の敵にしていたんだ。この男はアブドル・バハを見つける度に、つばを吐きかけるんだ。」

モナが続けて言いました。

「そんなにされてもアブドル・バハは決して怒らないで、いつもその男を許していたの。それどころか、そんなことをする男がかわいそうだと思われたのか、男が必要になるお金とか薬など、何でもあげていたのよ。」

「それでだ!」と言って、アスマが続けました。                「そんなことが30年も続いたんだぞ。30年も経って、ようやく男はアブドル・バハに悪いことをしたと気付いたんだ。それでアブドル・バハに謝って、自分を許してもらうようにお願いしました。もちろん、アブドル・バハは男を許しました。その時から、男はアブドル・バハの良い友だちになりました。」              お父さんが子どもたちに言いいました、「これで、許すことの大切さがわかったかな? アブドル・バハは、『どんなことがあっても、自分は傷つかないように、そして相手を傷つけないようにすること。』と言われているんだ。始めから怒らない方が、怒った後で許すよりもいいだろう?」

シャラが突然、食卓から離れて、急いで台所へ入っていきました。そして、果物いっぱいのかごを抱えて出てきました。

「グッド・ニュース!私、今日は大変だったけど、ほら、食後のデザートに果物!」と言って、シャラは果物かごをドーンと食卓の真ん中に置きました。シャラのおかげで、家族みんなで許すという美徳を学びました。こうして、この出来事を笑いながら振り返って、夕食後の一家だんらんのひと時を楽しみました。

 

 

クイズ

  1. 学校から家に帰って、シャラは何を見せようとしましたか?____________________________________________________________________________
  2. 婦人と少年はシャラたちの家に何を持って来ましたか?____________________________________________________________________________
  3. 婦人は何をするために来たと説明しましたか?_____________________________________________________________________________
  4. お母さんに呼ばれて、シャラはどんな格好をして出てきましたか?

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  1. リアズの話に出てくる、女の先生は学校に何を持って来ましたか?

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  1. 子どもたちは誰かに怒るたびに何をするように、先生から言われましたか? _____________________________________________________________________________
  2. クラスの子たちは許すには何をすることだと、習ったでしょうか?

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  1. クラスの子たちは誰かに怒ると、自分がどうなると、習ったでしょうか?

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  1. 腹が立つようなことに対して、男とアブドル・バハとではどこがちがうのでしょうか?_____________________________________________________________________________
  2. 腹が立つようなことに対して、あなたはそれを許したときのことを説明してください。_________________________________________________________________________________

いくつ答えられましたか?           答は保護者のページにあります。

 

 

 

       手袋の人形

材料:

綿の手袋

赤またはピンクの模造紙 (人形の胸にハート)

人形の体に詰める綿

輪ゴム

毛糸、(人形の髪)

いろいろな色のフェルト(人形に着せる洋服)

白ボンド

洋服の飾り

作り方:

手袋の親指を手袋の中に入れ込む (人形の洋服の内ポケットになる)

赤い模造紙から1辺が1㎝くらいの正方形に切り取って、ハートの形にする

*ハートに愛、親切などの美徳を書いて、内ポケットに入れておく

人形の手足になる、手袋の4本の指に、しっかり綿を詰めこんでいく

人形の首になる手袋の4本の指の根もとまできたら、そこに輪ゴムを巻きつける              人形の頭になる手袋の腕のところまできたら、そこに輪ゴムを巻きつける

*帽子になる手袋の腕のところを折り曲げて人形の頭にかぶせる

帽子の下の頭に髪になる毛糸を白ボンドで、くっつけていく

*フェルトで洋服や靴をつくる、目や口もつくる                                                                          *洋服や靴などに飾りつけする  これで、手袋人形できあがり

 

 

 

点つなぎの絵

 どんな絵になるかアルファベット順に点をつないでみましょう。その絵に色を塗りましょう。

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保護者のページ

次のアブドル・バハの引用文から、「許し」とはどういうことかを考察してみましょう。

 

 神が神の子らに対して寛容で愛情深いのは、我々の短所に対して寛大で慈悲に満ち給うということだから、どうして我々が互いに薄情で、狭量でいられるでしょうか。

 

 おお、汝ら神の友らよ!世界中のすべての人々や同族たち、敵たちでも、汝らに信頼、確信、期待をよせるほど力を尽くしなさい。たとえ人が百千の悪行を為そうとも、なお許しを期待することができ、落胆することも、悲嘆にくれることもないようにしなさい。

 

 誰からも気分を害されないようにしなさい。たとえ誰かが過ちを犯し、あなたに不正を行っても、直ちにその人を許さねばなりません。他の人に不平を言ってはなりません。彼らを非難しないように。もし忠告や助言を与えたければ、忠告を受ける人に負担にならない方法で行うようにし、方法のすべてが心に喜びをもたらすことに向けましょう。誰の心にも不快を与えないよう、重ね

重ね注意しなさい。

 

 罪を許す目をもって敵たちを見、どのような不正義に直面しても正義でもって行動し、すべてを許し、人類全体を自分の家族と、全地球を自国とみなし、あらゆる苦しみに同情を示し、病人を看病し、見知らぬ人に避難所を与え、貧者や助けを必要とする人々を助け、すべての傷口を手当てし、互いの幸せを喜び合いなさい。情け深くありなさい。そうすればあなた方の行動はランプからさし出る光明のように輝くでしょう。

 

  おお、神の軍隊よ!いかなる魂も傷つけることがないよう、またいかなる心も悲しませることがないよう用心せよ。その人が汝の知人であろうと、見知らぬ人であろうと、友であろうと仇であろうと、汝の言葉が誰も傷つけないよう用心せよ。万人のために祈れ。すべての人が祝福され、許されるよう懇願せよ。たとえ相手が汝の血に飢えていても、汝らのうちの誰に対しても復讐しようなどと思わないよう十分に注意せよ。

 

創造物に目をとらわれないで汝らの創造主に向かいなさい。強情な人々に目をとらわれないで、万軍の主のみを見なさい。

 

不当な扱いを受けて傷ついた人でも、その人に復讐する権利はありません。逆にその人は許しや寛大さを示すべきです。なぜなら、これこそ人間の世界にふさわしいことだからです。

 

クイズの答え:1)鼻血が出た鼻 2)果物かご 3)息子がケガをさせたシャラのお見舞い 4)ボクシングのかまえ 5)たくさんのじゃがいもと袋 6)じゃがいも1個、袋に入れる 7)自分より先ず相手の良い点を考える 8)怒るのは自分が傷つくだけ 9)男は怒るばかりで自分が傷つくだけ、アブドル・バハはどんなことがあっても,ご自分は傷つかないし、相手を傷つけない  10)自分で考えるように