共同体作りの第一歩は子ども教育です。それは、子どもこそは共同体の最も貴重な宝だからです。また、精神的な美徳をしっかりと身に付けた子どもがユースとなり、成人となっていけば、未来社会の安寧は確保されます。さらに、子どもたちが、精神的美徳を基盤として、知的優秀性まで身に付ければ、結果は「光の上にさらに照らされた光」であり、真の文明が花咲くことを可能とします。
「人間を計り知れないほど高価な宝石に富む鉱山と見なせ。教育のみがその宝を放出させ、人類にその利益を享受させることができる。(」バハオラ)
この聖句にある「高価な宝石に富む鉱山」とは愛情、優しさ、正義、信頼性、不動の心、高潔、誠実といった、人間の内部に存在する「美徳」です。また、自然界の現象を発見したり、美しい芸術品を作ったり、美しく崇高な考えを表現するために必要な人間の「知的・精神的能力」のことです。子どもクラスでは、こういった能力を引き出していきます。ここで言う子供クラスは、学校教育と家庭教育を補足するもので、近所や地域として提供するクラスです。
子供クラスの先生にとって、自分が教える子供たちは教える対象ではなく、独特の才能と能力を持った特別な存在です。ただしその才能や特質はほおっておいては出てきません。それらを引き出していかなくてはなりません。この「引き出す」という表現はキーワードです。美徳は、子供たちの魂の内奥に秘められています。それは、適切な教育と本人の意思と努力により、引き出すことができます「。路傍の石」という表現がありますが、ほおっておいては単なる石に終わってしまいますが、磨けば、それはとても美しいダイヤモンドになりうる、そういった可能性を秘めています。この宝石を引き出すプロセスが教育であり、子どもクラスの醍醐味です。
教育には二つの極端があります。ひとつは、子どもたちの心は、まだ情報が何も書き込まれていない白紙の状態であるから、教え込まなくてはならない、という考え方です。これは、詰め込み式の教育です。確か に、情報を教えたり、職人が使うような特殊なスキルを習得させるという意味では、教え込むことも効果的
かもしれません。しかし、精神的な美徳は、技術的な情報やスキルとは性質が異なります。それは、導き、引き出してあげなくてはならないだけでなく、本人がそれを出したいと思わなくては出てこな いものです。
もう一つの極端は、子どもにはすでに能力が備わっており、それは無理に教え込んだり引き出し たりせずに、自由に開花させるのがよい、とする放縦的なアプローチです。確かに創造性を育み、自由 な発想を奨励する意味では、これにも一理あるかもしれませんが、一貫性と系統性に欠け、また、規律や協調性を確実に習得できるとは言えません。バハイの子供クラスは、この両極端のちょうど中間に位置するものです。
徳育を強調するということは、相対的なものであり、知育や体育をおろそかにするという意味で はありません。身体的健康は、知育や徳育にも影響を及ぼしますから、軽んじることは決してできま せん。また、知育は、物質文明を推進するための強力なツールであることは疑いの余地もありません。したがって、体育・知育・徳育は調和を持って習得する必要があります。ただ、徳育の欠けた体育・知育重視の教育により、徳育がおろそかになった場合、それが個人と社会に及ぼす影響は、現代社会 のいわゆる先進国において明らかです。個性や人間性が無視され、犯罪的な行為がまかり通ってし まうことさえあります。それに比べ、仮に体育・知育がそこまで浸透しなくとも、徳育がしっかりしていれば、物質的には貧しくとも、その豊かな心は建設的に社会に貢献できるのです。もちろん、三つとも揃うことが理想であることには疑いの余地もありません。
道徳と善行をしつけることは、書物の学問よりもはるかに重要である。清潔で、立派な人格を持つ、行 儀のよい子は、たとえ無知であったとしても、無作法で、不潔で、いじわるであるが科学や学問に精通し ている子どもよりもましである。なぜなら、立派に振舞う子どもは、たとえ無知であったとしても他人 のためになるが、いじわるで行儀の悪い子どもは、たとえ学識があっても堕落しており、他人に害を与 えるからである。しかしながら、学識があり、しかも善良であるように子どもが訓練されるなら、結果は 光の上にさらに照らされた光である(アブドル・バハ)。
このように、バハイの子どもクラスは、徳育を基盤として知育・体育を考えます。それは、バハイの教えと聖典に基づいていますが、宗教的な教義を教え込むことを目的とはしていません。精神的 資質を発達させ、精神的に優れた人間になるための考え方や習慣、行儀を身につけさせることに注 意を払っています。バハイ子どもクラスは、興味のある人なら誰でも、親がバハイであるなしにかか わらず、近所の子どもたちの小グループを対象に実施できます。
子どもクラスでは、以下のような美徳を身につけられるよう共に学びます。
純粋な心 正義 愛 真実性 寛大さ 無私 喜び 誠実 謙遜 感謝 許し 正直 憐れみ 離脱 満足 親切 勇気 希望 信頼性 心を燃え立たせること 輝かしい心 忠実 忍耐 確固不抜